粗削りな走りながら世代トップクラスに入っても通用するポテンシャルを感じさせた。本格コースで行われる中距離ＧⅡで、クラシックに向けての出世レースとして定着し、９頭立てではあったが今年も好素材が揃っていた。結果５番人気での５着と好走したとは言えないが、スローペースで先行した上位人気馬がそのまま高速上りで流れ込む展開で、流れが向かないなか良く差を詰めている。デビュー戦同様に出脚が悪く後方２番手からの追走となる。ペースが緩み各馬手応え十分に直線に向き、決め手比べとなったがラスト11.3-10.9-11.2秒の上りでは先行勢が断然有利で、馬群の真ん中から脚を伸ばすも0.5秒差の５着が精一杯であった。デビュー戦の福島1800ｍ戦では後方追走から捲り気味に大外を進出し、他馬を圧倒する上り34.4秒を繰り出し加速ラップ(12.0-11.4秒)で快勝したが、今回はペースが緩んだなかで馬群に入り、スパートが遅くなったのも不運であった。父・フランケル、母は地方ダート重賞ウイナーのアムールブリエ、祖母は天皇賞(秋)を制したヘヴンリーロマンスと重厚感ある血統で、粗削りな走りや＋14キロの馬体からもまだまだ成長の余地を残している。小回りで豪脚を発揮し、今回も上がり最速タイと舞台を問わない強烈な末脚が魅力である。持続力戦でさらにパフォーマンスを上げそうな点も踏まえて、距離延長＋ペースの緩まない上級重賞で注目していきたい１頭である。

２番人気に推されながら３着に敗れたが、実績馬が新味を見せて復活の手応えを掴んでいる。３歳夏まではホープフルＳや弥生賞で２着、札幌記念でも古馬に混じって２着に好走していた実力馬である。好走は逃げ・先行で踏ん張るレース振りであったが、その後は上位争いにも加われない結果が続いていた。ここ２走は出遅れが続き以前のような戦法が取れずにいたが、前走の毎日王冠では強敵相手に上り最速を使って0.5秒差まで追い上げ、終いを活かす競馬でも差のないレースをしていた。今回もスタートで立ち遅れ最後方をポツンと追走する形となったが、じっくりと脚を溜めて直線では大外から一気の末脚で上り最速の３着と脚質転換を図れる結果を残した。上位２頭には離されたが、重賞実績からトップハンデの57.5キロを背負い、離れた最後方からの競馬でも好パフォーマンスを見せており、スタート難をきっかけに今後は直線に懸けるレース運びが復活への足掛かりとなる。小回りコースでの好走歴が大半を占めているが、差し馬として脚力を発揮できれば外回りコースは歓迎である。実績が示すとおりポテンシャルは高いものがあり、近２走の内容から脚質転換を本格的に取り入れれば、今後の重賞路線で活躍に期待できそうだ。

マイル王の称号を懸けた一戦で、マイル初挑戦ながら素晴らしい走りを見せ10番人気３着と波乱の立役者となった。現状のマイル路線トップクラスが集結したが、この馬は1400ｍ戦までの経験しかなく、前走スプリンターズＳから２Ｆの距離延長戦は大きな課題となっていた。一昨年のスプリンターズＳ２着、1400ｍまでの重賞４勝と短距離実績は文句なくＧⅠ級の能力は持っているが、折り合いに不安を残すなかでの14番枠も不利で10番人気の低評価は妥当と思えた。しかしレースでは自信満々の陣営の雰囲気そのままに素晴らしいレース振りを見せている。好スタートから折り合い良く先行集団を追走、３コーナー過ぎの下り坂から外々を進出し、絶好の手応えで直線に向くと残り300ｍで敢然と先頭に立った。残り200ｍでソウルラッシュに並ばれアッと言う間に突き放されたが、ラストまでしぶとく粘って３着争いを制している。外々を回った後方待機組が上位を独占した中で、唯一先行して上位争いをし直線差を詰めただけの各馬と違ってソウルラッシュに食い下がっている。これまでは番組編成や体調面の都合でマイル戦を使う機会がなかったが、年齢を重ねて1200ｍ戦は忙しくなっている印象で、マイル初参戦は好結果に結び付いたと言える。極端な上り勝負にならない1400ｍ戦のペースがベストではあるが、強敵相手のマイル戦ならペースが落ちる事はなく、この馬の力を発揮できる舞台となっている。マイル初挑戦でのレース内容を高く評価し、今後の動向に注目していきたい。